Jendela

□せみしぐれ
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「菜緒、お待たせ」


開け放たれた教室のドアをくぐりながら
窓際の席で中庭を眺めていた
小坂に名字は声を掛けた。

この教室は普段使われている棟から
1番離れた場所に位置しており
普段から使う人なんて滅多に居ない。

ましてや夏休みに入った今となっては
ここを使うのは名字と小坂位だろう。

「お疲れさん」

部活の道具が入ったカバンを
足元へ置きながら小坂の前の席に
向かい合うように座った名字に
労いの言葉をかける。


「そっちこそ、お疲れさん
プールの補講とか、女子は大変やね」

エアコンのかかったこの教室に入っても
嫌でも滲む汗をハンカチで抑えながら
名字は小坂に声をかける。

「そうでもないよ、
こうやって名前と会えるし」

はにかんだ顔でそう告げる小坂に
名字は幸せを感じた。

時計の針は13時を示しており
窓の外には蝉時雨がこだましている。
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