Jendela

□落ちるタイプの変化球
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「好きです。付き合ってください。」


数年来の思いを込めた告白。

まだ誰とも付き合う気無い。


その一言で断られたのは
もう2年も前のことだ。





「よっす」

軽快な挨拶とともに
教室に入ってきた女子が
一人称が告白をした相手、
上村ひなのだ。

「よっす」

一人称は挨拶を返す。

「今日の数学、誰からだっけ?」

彼女は所謂、不思議ちゃんなので、
一人称が告白をした次の日から
こんな風に普通に話しかけてきた。

「えーっと、蒲田じゃない?」

上村の1つ前の出席番号の生徒を示す。

「えっ、当たる
数学の予習、見せて」

一人称は告白を断られてからも
彼女への想いは変わらず、
それを知ってか知らずか
何故か告白を断られてからの方が
上村との距離が近くなった気がする。

まぁ、彼女のすることに
一々、頭を働かせたところで
無駄なことは痛いほど知っている。

中学の頃、テストの返却に
書いてあった先生のコメントに
返事を書いてから仕舞っていたこともあった。

きっと彼女の行動の理由なんて
聞いたところで彼女にしか分からないのだろう。



「名前ももうすぐ引退?」

高3の梅雨入り前、
様々な部活動が引退を迎える季節。

「うん、都大会は決まったけど
多分勝てないから、そこで引退かな
上村は?」

「今、ゲルニカの原寸模写してて
それが終わったら引退」

お互いにもうそこまで引退を意識している。

引退が済めば、登校日が減り
受験があって卒業までもうそこまで来ている。

未だに続くこの想いを伝える
タイムリミットが見えた気がした。


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