rak buku

□可愛らしい誘惑
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「なぁ、菜緒のお兄ちゃんになってみぃへん?」

そんなこと言われたら断れるわけないのに…


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「頼む!名前しかいないんだ」

大学時代のサークルで知り合ったこいつは
今ではけやき坂46のマネージャーをしているらしい。
大学を卒業して4年がたった今でも
月に2回ほど飲みに行く仲だ。

「で、家庭教師をしてほしい、と」

「そうそう、けやき坂46の高校生2年以下6人の」

「合同オーディションだっけ?
それで人数が増えたら?」

「報酬上げてその子も」

こんな話、金曜22時の居酒屋のカウンターで
するもんじゃないだろう、
ファンがいたらどうするんだ
そう叱責したいほどの危機管理能力の低下が
家庭教師の必要性を物語っている。

「なんで僕"しか"なんだよ」

「先輩から出された条件が
1.中高の教員資格
2.信頼できる人物
だったんだよ。」

中高の教員資格は
親に言われて嫌々とった資格だが
信頼できる人物と言われて嫌な気はしない。

「ここお前の奢りな」

けやき坂46の家庭教師を受けることにした。



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居酒屋で頼まれてから2週間経ち
正式に事務所から依頼されて、
今日けやき坂のメンバーと顔合わせすることになった。

なったのだが、

「悪い、仕事入って1人しか今日来れない」

そう待ち合わせの30分前に電話が来た。
彼女達は人気が出始めてきたアイドルなのだ、
そんなこともあるだろうと納得した。

約束のビルの受付で友人の名前を出し、
アポ確認を行うと会議室へと行くように
言われたので、お礼を言い会議室に向かう。


会議室のドアを開けると
女の子が1人で本を読んでいた。
こちらに気づいた様子はない。

むちゃくちゃ可愛いなぁ、さすがアイドル
そう思いながら、沈黙と共に
時計とにらめっこを始める。

時間になっても誰も入ってくる様子はない。

友人に電話することにした。

「もしもし、誰も来ないんだけど」

「メンバーいなかった?」

そう言われて改めて部屋を見渡すと
そこで初めて彼女と目が合った。

「まぁ、よろしく」

友人が電話先でそう言ったが
その声は逆の耳から抜け出たようだった。
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